top of page

長谷川テル訪問記念の碑除幕式を終えて

奈良・長谷川テル顕彰の会会長 宮城恭子

 除幕式当日、制作者である彫刻家、坂口紀代美氏により「山吹燃ゆる」と命名された『長谷川テル 訪問記念の碑』はその姿を現した。 

 私たち奈良・長谷川テル顕彰の会は『テルさん般若寺訪問記念の碑』を造ろうと方針をたてたが、素人で未経験者ばかり、碑建立の順序もわからぬまま気持ちだけが先行した。 

 ようやく坂口紀代美氏にグランドデザインをお引き受けいただき「寝ても覚めても長谷川テルさんに想いを馳せ」創作して頂いた『碑』の仮想写真を見て驚いた。まるで佐保川に泳ぐ魚が姿を消し、探しているうちに、雲を衝く大きな龍に姿を変えて現れた、そんな印象だった。 

 その凛々しく力強く気品に満ちた立ち姿! 

 テルさんの足跡から学び、事績を紹介し、宣伝する作業を始めて6年。 

「この碑は、若き日のテルさんが学友とともに『この閉塞的な社会を変えるために私たちは一緒に戦いましょう』と誓い合った、その記念だけに止まらず21世紀の世界に向けた平和への願い、運動を誓い合い鼓舞する碑に転化した!」と溢れるうれしさが込み上げてきた。 

 碑の設置作業の熱気に満ちた進行とともにテルさんに心を寄せてくださる多くの方々の善意と浄財が集まり、とうとう碑は完成した。 

 唯一つの気がかりがあった。除幕式の日に献花する山吹の花が無かったら⁈ 

 近年の気候不順も極まり、花屋さんの「山吹の花は3月20日で出荷終了」

宣言。4月初旬の花盛りの時期に山吹の花探し、4月30日までその美しい5

弁あるいは八重の黄金色の冷蔵保存などを依頼しまくった。般若寺さんは「こ

の寺は平城京遷都以前に高句麗の高僧が建立されたともいわれ、創建は謎に包

まれているが長い歴史がある。江戸時代は山吹の寺といわれていた。しいたげ

られた人々を物心両面で救済する文珠信仰の伝統がある」と教えてくださった。 

 除幕式の前日4月29日、朝から般若寺さんのお許しを得て、境内の山吹の

枝を伐らせていただいた。参拝客があちこちの山吹の花をバックに記念撮影を

されている。その間を縫って、この豪華な枝、あの可憐な枝ぶりと境内を廻り

ながら約100枝を伐らせていただいた。山吹は実をつけないからこんなに細

い枝で多くの花をさかすことができるのねと妙なところに納得もできた。何処

にいるのか鶯がきれいな声で「よかったね、明日は本当の山吹燃ゆる日だね」

とくりかえし鳴いて祝福してくれた。夜は強風と豪雨に見まわれた。翌日、

4月30日は照らず降らずの曇り空。屋外で150余名が集い、山吹燃ゆる碑

を除幕、鑑賞した。 

 参加者が平和への願いと決意を込めて次々に献花した黄金色の山吹は、ひと

きわ緑に映え、テルさんの何物も恐れぬ勇気とエスペランチストとしての愛溢れる行動を賞賛した。 

顕彰碑 (004).png
bottom of page